カロリメーターマスターへの道 Vol.8
RNase AをDSCで測定してみよう!その1

> ここに登場する人物とストーリーはフィクションです。
テクニカルに関する内容に関しましては、大阪府立大学客員研究員 深田先生にご助言をいただいております。

ページ下の「ダウンロード」ボタンより、本文中に登場する、
「VP-DSC データ解析手順」がダウンロードできます。


【前回までのお話】

丸番製薬の仲村さんは、深田先生の下でVP-DSC測定の基本である「水-水測定」を行い、操作方法を習得できました。

【今回のお話】
仲村さんは手始めに、Malvernより販売されているTest Kit, RNase A(カタログ番号KIT100010)の測定を試みることにしました。
深田先生。今日はRNase Aの測定を行います。よろしくお願いします。
はい、こちらこそよろしくお願いします。
測定条件は、日本語簡易マニュアルのP.13.からがRNase Aサンプルの測定になっているので、そちらに従います。
Number of Scansを20にするのは、今夜一晩かけて、緩衝液によるコントロール測定を行い、明日の朝一でサンプル測定を行う際、何スキャンまで進むかわからないので、多めに設定しておくんですよね?
その通りですね。

Feedback Mode/GainはLow。ファイル名を保存して。先生、iTC200のときにファイル名のルールがあったと思うのですが、VP-DSCは特にないのでしょうか?
いいえ。iTC200と同じOriginベースの解析ソフトウェアですから、ファイル名は、頭文字は必ずアルファベットで、英数字で10文字以内に収めてくださいね。

はい。保存先を選んで、、
ところで先生、Feedback modeやFiltering Periodは常に同じものを使えばいいのですか?
いいえ、違います。サンプルや測定条件に応じて適切な条件を選ぶ必要があります。マニュアルにも記述がありますね。

サンプルがタンパク質のときは、Feedback modeはLowやNoneを用います。
Feedbackの速さ、とありますが、このFeedbackはiTC200のときにも設定したと思うのですが、概念は一緒ですか?
そうですね。同じHighでもiTC200での速さと異なりますが、サンプルセル内に熱量変化があった場合、リファレンスセルと差がなくなるようにするためにかける熱量を、積極的にかけるか、そうでないか、ということになりますね。相転移が速いリポソームなどは、Feedback modeを速くしないと反応に追いつけず、ピークがブロードになったりするんですよ。こちらのスライドをご覧になると分かりやすいかもしれませんね。同じサンプルでも、Feedback modeが異なると、ピークのシャープさが異なるのがよくわかりますよね?

本当ですね!では、Filtering periodは?
この数字は、取得したデータを何秒単位で平均化して表示するか?を示しています。数字が小さくなれば、その分データは細かくなりますし、大きくなれば粗くなりますよね?ここにもイメージしやすい資料がありますよ。同じサンプルでFeedback modeとFiltering Periodを変えて比較していますね。

タンパク質は脂質に比べ、反応がゆるやかなので、Feedback modeが変わっても、ピークの形はそれほど変わっていませんね。でも、Filtering Periodが変わるとどうですか?
ノイズが大きくなっていますね!
そうですね。あと、Feedback modeが高くなると、同じFiltering Periodでもノイズが見られますね。これは、midがPassive(= none)よりも積極的にサンプルセルにFeedback powerをかけているからこのようになるんですね。

だからタンパク質はNoneまたはLowなんですね。
測定条件の設定が終わったので、まずは両方のセルに緩衝液を入れて、コントロール測定を行います。システムはすでに立ち上がっているので、まずは緩衝液の脱気ですね。その前に冷凍されたサンプルを解かして、室温に戻しておくことが重要ですね。
そうですね。冷たいものが温かくなると、溶液中に溶けている空気が気泡となって現れますから、冷たい状態で脱気をするのはよくありません。なお、脱気装置のThermoVacのTimerを使うと、自動で3分後に止まりますから、その機能を使ってもいいですね。

はい、わかりました。
脱気が終了したので、システムを洗浄します。圧力キャップを外して、圧力センサーに圧力プラグで蓋をします。超純水で満たされているので、セルの両方から取り出してセルクリーニングデバイスをセット。14% Decon90(または20% Contrad70)の後で超純水で洗浄、、、
あ、緩衝液でセルをリンスしたほうがいいですよね?
良いところに気づきましたね。

でも、脱気した緩衝液はセルに充填する分しか準備しませんでした。
セルのリンスが目的ですから、この場合は脱気をしていなくても問題ありませんよ。

よかったです。では、フィリングファンネルをセット。脱気した緩衝液を700 μL程度ガスタイトシリンジに入れて気泡を追い出す。サンプルセルにガスタイトシリンジを挿入し、フィリングファンネルの穴から溶液が見えるまでゆっくり注入。液面が見えたらポンピング数回。セルの入口からあふれている溶液を取り除いて、フィリングファンネルを外す。フィリングアジャストシリンジでセルの液面の高さを調節。同じ操作をリファレンスセルでも繰り返す、と。圧力プラグを外して、圧力キャップをしっかり閉める。モニターでPressureを確認。 問題なし!
なかなかスムーズでしたね。

ありがとうございます。それでは測定を開始します。でも、PreScan Thermostatの15分が終了して、Final Equilibrationに入ってからDP値が限りなくゼロに近づいているのを確認しなければならないんですよね?
そうですね。セルに気泡が入っていると、DP値が高くなったり、低くなったりしますから、必ず確認しましょう。

その2へ続く
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